クトゥルフ神話TRPGのゲームマスター、通称「KP(キーパー)」のオフセッションにおける進め方をまとめたものです。これを上から読んでおけばシナリオは回せる、というくらい細かくまとめています。ちょっと長いので、必要なところだけ読んでも構いません。
- KPの必需品
- セッションの日程を決める
- セッション前日
- セッション当日の流れ~セッション開始前まで~
- セッション開始!!!
- セッション中の休憩時間(40~70分)
- 休憩時間でキーパリングを見直す
- 種明かし&成長処理
- まとめ:完璧に回せるKPなどいない
クトゥルフ神話に限らず、TRPGにはどこもGM(ゲームマスター)が足りません。ただでさえややこしいゲームで、ロールプレイをするのでいっぱいいっぱいなのに、GMまでやるのはちょっと…と足踏みしてしまうのかもしれませんね。
KPがいつも一緒、という卓は少なくないですが、たまにはKPもみんなと一緒にPCを動かしてみたいもの。初心者にはめいっぱいセッションを楽しんでもらいたいですが、最終的に「参加者は全員KPになれる」という状態が、卓として理想の姿ではあります。
この記事を読んで、『KPやってみようかな!』と思ってくれる人がいたら、これほど嬉しいことはありません。
KPの必需品
まずはKPの必需品、ルールブック(通称「ルルブ」)とダイスを手に入れましょう。
ルールブック(ルルブ)
これがないと始まらない、KPの必需品。クトゥルフ神話TRPGを回すルールがびっしり書かれている魔導書ルールブックです。
2019年12月に改訂版が発売!
新ルルブ
「クトゥルフ神話Trpg」が15年ぶりに全面改訂!
— ログインテーブルトークRPGシリーズ (@LOGiN_TRPG) 2019年9月6日
『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック』12月20日発売決定です!https://t.co/1AUBv8FmjG
旧ルルブ
※気心の知れたメンバーでやるオフラインセッションならKP・PLともにルルブを持たなくてもなんとか回るかもしれませんが、オンラインならKP・PLともにルルブを持っていないとマナー違反である、と感じる人が多いという点は覚えておいてもいいかもしれません。
多面ダイス
基本的にダイスは7個(4面・6面・8面・10面×2・12面・20面)。ダイスはデザインの好みもあるので、ネット通販ショップやボドゲショップなどでじっくり選んでみてください。
アプリもあるので強いて買う必要はないんですが、多面ダイスを振るせっかくの機会です。愛着のあるマイダイスを使ったほうがテンションが上がりますし、本物を使うとダイスの女神様がニヤニヤしながらシナリオを面白い方へ転がしてくれる…そんな気がします。
泣いても笑っても、すべてはダイスの女神の御心のままに!
セッションの日程を決める
だいたい1ヶ月~2週間くらい前までにはセッションの日程を確定しておきます。
セッション一週間前~前日
シナリオを選ぶ or 作る
KPはシナリオの作成あるいは選定をします。
円滑なキーパリングのため、最低でも1週間前からシナリオにあたりをつけておくと安心です。セッション予定を立てる段階で、PLからどんなシナリオをプレイしたいかという希望を聞いても良いかもしれません。
シナリオを選定する場合はセッションの1週間前、シナリオを自作する場合は3週間前から着手すると当日慌てなくて済みます(経験談)。
シナリオを印刷する
オフセッションなら割と大切。
シナリオは紙で印刷することをおすすめします。B4・A4の両面印刷や、よほど分厚くなければA4の小冊子形式でもOK。
紙媒体のメリット
- シナリオを読み込んだときにメモ書きや注意書きなどができる。
- プレイヤーが行った行動をすぐメモできる。
- どんな処理をすればよいのか素早く見つけられる(読み込んでいる場合)。
- 充電が切れない。
シナリオを読み込む
当日まで、スキマ時間を活用するなどしてシナリオを読み込んでいきます。
(1)シナリオで押さえるべき3つのポイント
- シナリオの大まかな流れ
- 難易度
- 傾向(クローズドorシティ/ロストの有無/発狂・SAN値直葬の有無/NPC有無/戦闘の有無/探索重視orロールプレイ重視など)
(2)印刷したシナリオには積極的にメモする
印刷したシナリオには、自分なりに書き込みをしていくと、当日のセッションに役立ちます。
地図やメモを出すタイミングや描写で気を付けるべきポイントをメモしたり、絶対に落としてはならない情報に印をつけておくと、想定外の質問や行動が来ても対応しやすくなるでしょう。自作するときは確実に伝えたい情報を太字にしておくと分かりやすいです。
pixivや個人サイトに落ちているフリーシナリオは、良くも悪くもざっくりしているものが多いので、そこを自分好みに改変するよう書き換えるのも楽しいです(改変する場合は、シナリオ製作者に敬意を払うのを忘れずに)。
(3)余力があれば「推奨技能」を決めておく
シナリオを読み込んでだいたいの中身が把握できたら<推奨技能>を書きだしておくと便利。PLが作ったキャラクターシートを見て、技能取得に関してアドバイスするときに役立ちます。
例えば「<天文学>に99%も振るのは止めてください。このシナリオでは外に出られません」「舞台は現代日本なので<M79 グレネード・ランチャー>の技能への加算は許可できません」など。
ざっくりとタイムスケジュールを立てておく
PLにも予定があるので、セッションはなるべくスケジュール通りに進めるのが望ましいです。時間管理に注意を払わないと肝心の場面で駆け足になってしまう可能性もあります。
実際のセッションではPC作成や休憩などを挟むので、その点を考慮してスケジュールを立てましょう。
(1)セッションが長引く原因
シナリオによって、思わぬところで時間がかかってしまうものがあります。原因として考えられるのは、
- 行けるところが多すぎる
- ロールプレイや茶番が多い
- 情報不足+KPが放任主義
- 作戦会議に時間を取られる
- 分断行動しやすい(処理量が2倍以上に)
特に自作シナリオは見落とされがちなので今一度確認しましょう。
(2)はじめは「一本道シナリオ」を回してみる
例えば、マルチエンディングがない「一本道シナリオ」は時間管理が楽です。PLの作戦会議が短く済みますし、ある程度はKPが強引にシナリオを進めやすいというメリットもあります。
あからさまに自由度が低い一本道シナリオは楽しさが半減しますが、一本道シナリオでも演出を工夫してPLが「自分で行動を選択している」と思えるよう誘導している秀逸なシナリオも多数あります。
もし初めてで時間管理に自信がないなら、こういったシナリオを回すのも一つの手です。
セッション前日
持ちものを確認
当日になって慌てて準備して、忘れ物などをするとキーパリングに支障が出ます。
以下のものは忘れないように、前日のうちに準備しましょう。
- 回すシナリオ
- ルールブック
- 各種サプリメント(あれば)
- ダイス
- メモ帳&フリクションボールペン
(PCの能力値やギミックは変動するので、消せるペンが良い) - キーパースクリーン(あれば)
- ノートPC(必要な場合)
セッション当日の流れ~セッション開始前まで~
シナリオ概要や推奨技能などの説明
推奨技能、ステータスの振り方(振り直しX回)、ハウスルールなどを、キャラクターシート作成前に説明します。
主にシナリオの傾向やロストの可能性、シナリオ難易度、その他注意点などを連絡します。キャラクターシートをセッション前日までに作らせる場合は、それまでに通達しておくと良いでしょう。
PCの作成(30~60分)
PLにPC(プレイヤー・キャラクター)を作成してもらいます。
クトゥルフ神話TRPGのシステムは自由度が高いぶん、KPだけでなくPLにとっても複雑です。参加者に初心者がいる場合、ステータスの説明から技能の説明に至るまで、キャラクター作成のレクチャーをしてあげること。あるいは慣れているPLに任せましょう。
(1)HOの配布 ※該当する場合
PC同士の関係性が明記されている場合は、ここでHOします。
※HO(ハンドアウト)…PLに配布される資料のこと。PC作成時の注意事項、セッション中に渡される手紙や文書、地図、写真など。
(2)ハウスルールの周知 ※該当する場合
ハウスルールを設定している場合はセッション前に周知しておきましょう。
(2-1)ハウスルール:技能値の上限
技能値の上限をハウスルールで設定している場合は、それも忘れずに説明します。
私たちの卓では以下のように設定されることが多いですね。
- 60%…食っていけるレベルのプロ
- 70~80%…界隈では世界的に有名なプロ
- 90%以上…世間にも名前が知れ渡るスペシャリスト
(2-2)ハウスルール:戦闘について
クトゥルフ神話TRPGにおいて、戦闘中における<回避>の扱いは重要です。
基本戦闘ルールでは<回避>を行うとそのラウンド中攻撃ができなくなりますが、<回避>後も攻撃を認める卓もあります。
攻撃でクリティカルが出た場合は「<回避>不可」か「ダメージ2倍」あるいはどちらかを選ばせる処理をすることが多いので、シナリオ難易度によってどうするか決めておきましょう。
(3)キャラクターシート確認(30分)
KPは各PLのキャラクターシートに必ず目を通してください。技能ポイントや趣味技能ポイントの割り振り、推奨技能の取得度、持ち物(明らかにおかしい持ち物がないか)などを確認します。継続PCの場合も同様です。
継続PCの場合は魔術を覚えていたり魔導書を持っていたり前回のトラウマを引きずっていたりするので、特に気を付けてください。
キャラクターシート作成はだいたい1時間くらいかかります。
セッション開始!!!
キャラクター説明(10~15分)
PCの紹介を各々のPLにしてもらいます。卓によりますが、私たちは以下のように技能を紹介してもらうことが多いです。
- 名前/年齢/職業
- 能力値および能力値ロール
(STR/CON/POW/DEX/APP/SIZ/INT/EDU/SAN(+不定値)/アイデア/知識/幸運/ダメージボーナス/MP/HP) - その他取得している技能(ポイントを割り振っているものだけ)
- 持ち物(やばいものが入っていたらその場で却下すること)
- 簡単なプロフィール
KPがマスタリングに慣れてきたら、探索者がその技能を取得しているに足る理由を聞き、シナリオの推奨技能を鑑みながらアドバイスを行ってもよいでしょう。
※秘密持ちシナリオを回す場合は、キャラクター説明の前に「発表してほしいステータス」だけを紹介してもらうように伝えてください。
シナリオ導入
シナリオによっては導入で技能ロールするものがあります。「導入ではダイスを振らない」というシナリオも多いので、もし導入でダイスを振らせたいなら、必要に応じてKP側から技能の使用を促しましょう。
導入部分で情報を見落としてしまうようであれば、導入をあえて長引かせてもよいかもしれません。導入をあまり引き延ばすとプレイヤーはシナリオに入り込むことができないので、動きそうになかったらサクッと先に進めましょう。KPはできるかぎりすべての情報を与えるため骨を折るべきですが、無理してすべての情報を渡す必要はないと心得ておくのは大事です。
(1)秘密持ちシナリオの場合
PL同士のメタ発言を許可するオフセッションの場合、個別導入は難しいと思われます。別の部屋が用意できない場合、秘密持ちシナリオではそっとHOを渡す、あるいはLINEなどの文明の利器で対応します。
該当PLにはくれぐれもPCの秘密を口に出さないよう言い含めてください。事件解決に前向きなPLの中には、うっかり自分のHOを公表してしまう人もいるからです。
セッション中の休憩時間(40~70分)
TRPGセッションは長いものです。4時間程度(これでも初心者は「長い!」と感じるので配慮してあげてください)ならいいんですが、平気で8時間超えするシナリオもあります。
ぶっ続けでセッションさせるわけにはいかないので、適度に休憩時間や昼食時間を設けます。シナリオ進行を担うKPが、キリの良いところで区切るのが自然です。
小休憩は10分くらい、食事は30分くらいでしょうか。セッション前に食事を済ませる、食事しながらキャラクターシートを書いてもらうというのもありですが、いずれにせよこうした時間を想定せずにセッション予想時間やタイムスケジュールを立ててしまうと、時間が足りずに焦ってしまうので注意してください。
休憩時間でキーパリングを見直す
休憩時間は、KPにとってキーパリングを考えなおす貴重な時間でもあります。未開示情報の整理を整理し、ペース配分を見直してみてください。
シナリオの進行に関して「KPの言うことは絶対」です。シナリオを進めていくうちに不都合が生じた場合は、その場でシナリオを改変したり強引な手法(情報をまとめて提供する/アイデアロールを駆使する)を使ったりしてシナリオを進行させましょう。
たいていのシナリオは最後に力を入れているので、クライマックスに十分な時間が避けない、という事態は避けたいものです。
種明かし&成長処理
セッションが終わったら、種明かしと成長処理を行います。
必ず種明かしはするので、最後まで出なかった情報はメモしておくと楽です。マルチエンディングのシナリオなら、エンディングについても話してあげましょう。
セッション終了後はたいていPLから質問攻めに合うものですが、未判明の情報はKP側から教えてあげないとなかなか気づけないので、KPが積極的に種明かしする姿勢でいたほうが良いかもしれません。
まとめ:完璧に回せるKPなどいない
KPの経験があれば、「処理間違えたな…」とか「アドリブで入れた展開でちょっとグダっちゃったな」など、必ず反省点が見つかります。
しかし、どんな超人的なKPでも、完璧なキーパリングなんてできません。気を取り直し、次回のセッションでよりよいキーパリングができるように務めましょう。